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2020年東京五輪代表選考に関するご報告(CASへの提訴の経緯)

公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)
会長 八木原 圀明

JMSCAは、第32回オリンピック競技大会(以下「2020年東京五輪」)の日本代表選手の選考につきましては、2019年5月21日に「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)におけるJOC推薦選手の選考について」(以下「JMSCA基準」)を公表させていただきました。JMSCA基準は、2018年10月に国際スポーツクライミング連盟(International Federation of Sport Climbing 以下「IFSC」)が国際オリンピック委員会(International Olympic Committee 以下「IOC」)の承認を得て公表した「Qualification System - Games of THE XXXII Olympiad - TOKYO 2020」(2019年2月に一部改定 以下「IF基準」)に基づき、なおかつIF基準の解釈について疑義がある点はIFSCに何度も確認をしてその解釈を確定(以下「従来解釈」)させた上で、JMSCAが作成したものです。

ところが、IFSCが、2019年10月に何ら正式な説明をしないまま、従前の態度を覆し、IF基準の解釈に大きな変更を行いました(以下「新解釈」)。この新解釈によれば、従来解釈により作成されたJMSCA基準に則り代表選考をすることができなくなってしまいます。すなわち、新解釈によれば選考大会割当出場枠(JMSCA基準1参照)は2名以内とされるため、世界選手権八王子大会で7位以内に入り日本人最高位となった優先選考選手(野口啓代選手、楢崎智亜選手 JMSCA基準3【2】(1)(a))及び同大会で7位以内の日本人第2位となった選考大会割当出場枠を有する選手(野中生萌選手、原田海選手)以外に、選考大会割当出場枠を有する選手が出てきた場合の選手選考(優先選考選手以外の選考大会割当出場枠を有する選手が複数の場合の選考 JMSCA基準3【2】(1)(b))の実施が難しくなります。このことは、仮にオリンピック予選大会(Olympic Qualifying Event 2019開催日:2019年11月28日~12月1日、開催場所:フランス・トゥールーズ)で6位以内に入った選手やアジア選手権大会(開催日・開催場所未定)で優勝した選手(正確には枠を持たない選手の中での最高位の選手)は、選考大会割当出場枠を得られず、2020年東京五輪の出場の機会を奪われる可能性が高いということを意味します。

JMSCAは、このような事態を避けるべく、IFSCと協議を重ねてまいりましたが、残念ながら本日までに受け容れ得る十分な回答は得られませんでした。残された手段は、スポーツ仲裁裁判所(Court of Arbitration for Sport 以下「CAS」)に提訴し、IFSCの新解釈を取り消してもらうことしかありません。ここでCASとは、1984年にIOCが設立した、スイス・ローザンヌに本部をもつ、国際的なスポーツ紛争解決機関です。

JMSCAとしては、残された手段であるCASへの提訴をするとしても、オリンピック予選大会が終了する2019年12月1日までにその判断を仰がなければならず、時間が切迫しているため、苦渋の決断として、本日、CASに提訴します。なお、IFSCは新解釈において、開催国割当出場枠についても従来解釈と異なる解釈をしているため、この点についてもCASにて争います。

このような事態になってしまいましたことついて極めて遺憾でありますが、2020年東京五輪出場を目指す全ての選手の出場の機会が断たれることがないよう、最大限の努力をする所存です。

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